サッカー選手と国籍
J1京都サンガのボランチとして活躍している元U-18韓国代表MF尹星俊(ユン・ソンジュン)選手が、日本国籍取得する意向と報じられています。世界へ飛躍した朴智星や遠藤航、最近ですと佐野海舟と比較されることも多いようです。守備力だけでなく柔らかいトラップや鋭いパスで局面を変えることができ、比較されるレジェンド以上ではないかと個人的に注目していました。90分間ハイプレスのチームが増え、ビルドアップではボランチは常に相手に狙われています。ボランチのレベルがチームを大きく左右します。尹星俊選手が日本国籍を取得し日本代表になって欲しいと1サッカーファンとして期待しています。
ちなみに外国籍のサッカー選手は帰化すれば日本代表の資格が得られるのでしょうか? 逆に帰化しないと日本代表になれないのでしょうか?
答えは、YesでもありNoでもあります。どういうことでしょう。この疑問を解決するにはFIFA(国際サッカー連盟)規約の5~9条が関係します。
1. 国籍があれば代表になれるわけではありません
選手が「その国の代表としてプレーできるか」は、 “恒久的な国籍(Permanent Nationality)”を持っているかどうかが基準になります。
- 住んでいる期間によって変わる一時的な資格ではなく
- 法律上、安定して認められる国籍であること
が必要です。
2. 「国籍を持っている」と「国籍を取得できる」は別の概念です
FIFAはこの2つを明確に区別しています。
国籍を“持っている”とは?
次のいずれかに該当する場合です。
- 出生などにより自動的に国籍を取得した場合
- 帰化手続を経て国籍を取得した場合
つまり、「法律上すでに国籍を持っている状態」を指します。
一方で、「取得できる可能性がある」だけでは代表資格にはなりません。
3. 一度公式戦に出場すると、原則として他国の代表には変更できません
すでにある国の代表として公式戦(カテゴリー不問)に出場した選手は、 原則として別の国の代表としてプレーすることはできません。
※例外はFIFA規定第9条に定められています。
4. 複数の国籍を持つ選手が代表になれる条件
選手が複数の国籍を持っている場合でも、 国籍があるだけでは代表としてプレーできません。
(欧州や南米では二重国籍を認めていますが、日本は認めていません。またブラジルなど国籍離脱を認めていない国もあります)
次のいずれかの条件を満たす必要があります。
① 本人がその国で生まれている
② 実父または実母がその国で生まれている
③ 祖父母のいずれかがその国で生まれている
④ その国に5年以上住んでいる
5. 特別ルール:共通の国籍を持つ協会同士の合意
一部の国や地域では、複数の協会が「共通の国籍」を共有している場合があります。 (例:イギリス内の複数協会など)
そのような協会同士は、次のような特別な合意を結ぶことができます。
・④の「5年以上の居住」条件を削除できる
・または、居住期間をより長く設定することも可能
・合意内容はFIFA評議会の承認が必要
👉 国や地域の事情に合わせて、柔軟な運用が認められています。
6. どの協会が「共通の国籍」を共有しているかはFIFAが決定
FIFA事務総局が、通達(サーキュラー)によって 「どの協会が共通の国籍を共有しているか」 を随時発表・更新します。
7. 新しい国籍を取っただけでは代表にはなれません
新しい国籍を取得しても、 一定の条件を満たさなければ代表としてプレーすることはできません。
次のいずれかに該当する必要があります。
① 本人がその国で生まれている
② 実父または実母がその国で生まれている
③ 祖父母のいずれかがその国で生まれている
④ 一定期間その国に住んでいる
8. 「居住期間」のルールは年齢によって変わります
新しい国籍を取得した選手が、 出生や家族のルーツに該当しない場合は、 その国に一定期間住んでいることが必要です。
居住を開始した年齢によって必要な期間が異なります。
● 10歳未満で住み始めた → 3年以上
● 10〜18歳で住み始めた → 5年以上
● 18歳以上で住み始めた → 5年以上
② 協会を通じてFIFAの審査機関へ申請を行う
9. 「10〜18歳で移住した選手」には追加の条件があります
10歳以上18歳未満で移住し、 「5年以上の居住」を根拠に代表資格を得ようとする場合は、 次の2つの条件を満たす必要があります。
次のいずれかに該当する必要があります。
① 代表チーム入りを目的とした移住ではないことを証明する
② 協会を通じてFIFAの審査機関へ申請を行う
日本国籍との関係
欧州では移民が多く二重国籍を認め出生地主義を採用している国も多いため、時代を反映しFIFA規約は何度も見直されました。最近ではアジア諸国でも欧州出身選手が代表選手として登録されています。日本では二重国籍を認めておらず血統主義を採用しているなど欧州ほどではありませんが、時代とともに尹星俊選手のような帰化を選択する選手が増えてくるのではないでしょうか? 国籍は単なる法律上の概念にとどまらず、個人のアイデンティティや生き方にも深く関わります。だからこそ、国籍をめぐる決断には迷いや不安が伴うものです。行政書士として、私はクライアントの国籍に関する選択を「人生の大きな決断」として受け止め、その重大さを理解し、一人ひとりに寄り添いながらサポートしていきたいと考えています。
